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(GIRY is hurrying across. RAOUL appears and calls after her) RAOUL Madame Giry. Madame Giry... GIRY Monsieur, don't ask me-- I know no more than anyone else. (She moves off again. He stops her) RAOUL That's not true. You've seen something, haven't you ? GIRY (uneasily) I don't know what I've seen... Please don't ask me, monsieur... RAOUL (desperately) Madame, for all our sakes... GIRY (She has glanced nervously about her and suddenly deciding to trust him, cuts in): Very well. It was years ago. There was a travelling fair in the city. Tumblers, conjurors, human oddities... RAOUL Go on... GIRY (trance-like, as she retraces the past) And there was... I shall never forget him: a man... Iocked in a cage... RAOUL In a cage...? GIRY A prodigy, monsieur! Scholar, architect, musician... RAOUL (piecing together the jigsaw) A composer... GIRY And an inventor too, monsieur. They boasted he had once built for the Shah of Persia, a maze of mirrors... RAOUL (mystified and impatient, cuts in) Who was this man...? GIRY (with a shudder) A freak of nature... more monster than man... RAOUL (a murmur) Deformed...? GIRY From birth, it seemed... RAOUL My God... GIRY And then... he went missing. He escaped. RAOUL Go on. GIRY They never found him it was said he had died... RAOUL (darkly) But he didn't die, did he? GIRY The world forgot him, but I never can... For in this darkness I have seen him again... RAOUL And so our Phantom's this man... GIRY (starts from her daze and turns to go) I have said too much, monsieur. (She moves off into the surrounding blackness) And there have been too many accidents... RAOUL (ironical) Accidents?! GIRY Too many... (And, before he can question her further, she has disappeared) RAOUL (running after her) Madame Giry...! |
(ジリーが急いで舞台を通り過ぎていく。 ラウルが出てきて彼女を追って呼びかける。) 〔ラウル〕 マダム・ジリー…。 マダム・ジリー…。 〔ジリー〕 ムッシュ、私にお尋ねにならないで下さいまし―――。 私も他の人達と同じ以上のことは存じません。 (彼女は再び去っていく。彼は彼女を引き止める。) 〔ラウル〕 そんなことはないでしょう。 あなたは何か見たのですね? 〔ジリー〕 (そわそわと) 自分が何を見たのか分からないのです…。 お尋ねにならないで下さい、ムッシュ。 〔ラウル〕 (絶望的に) マダム、お願いですから、皆の為に…。 〔ジリー〕 (神経質に辺りを見回し、そうして即座に彼を信用する決心をして口を挟む) よろしゅうございます。 もう何年も前のことです。 街に巡回市がやってきました。 軽業師、奇術師、奇人たち…。 〔ラウル〕 続けて下さい…。 〔ジリー〕 (自分の過去をたどりながら陶酔したように) そしてそこに…彼を忘れられません…檻に閉じ込められた人間が…。 〔ラウル〕 檻…? 〔ジリー〕 神童だったのです、ムッシュ! 学者で…建築家で…音楽家で…。 〔ラウル〕 (言葉のジグソーパズルのピースを一緒に埋めて) 作曲家だった…。 〔ジリー〕 そして発明家でもありました、ムッシュ かつて彼はペルシアの国王(シャー)のために建物を作ったという話でした。 鏡の迷宮を作ったと…。 〔ラウル〕 (訳が分からずしびれをきらして口を挟む) その男は何者なんです…? 〔ジリー〕 (身震いして) 自然の気まぐれ…。 人間というより化け物…。 〔ラウル〕 (つぶやく) 奇形…? 〔ジリー〕 生まれつきそうであるようでした…。 〔ラウル〕 神よ…。 〔ジリー〕 そして…彼は行方不明になりました。 逃げ出したのです。 〔ラウル〕 続けて下さい…。 〔ジリー〕 皆彼を見つけることができませんでした―――。 死んだのだという話になりました…。 〔ラウル〕 (陰鬱に) でも死んではいなかったのですね? 〔ジリー〕 世間は彼のことを忘れました。 でも私は忘れられませんでした…。 それというのも、暗闇の中で再び、私は彼に会ったのです…。 〔ラウル〕 では我々の言う怪人(ファントム)とはその男なのか…。 〔ジリー〕 (発(はっ)と呆然から立ち直り、立ち去ろうと振り向く) 多くを話しすぎました、ムッシュ。 (彼女は辺りの暗がりへと立ち去る。) あまりに多くの事故が起こってしまったから…。 〔ラウル〕 (皮肉っぽく) 事故!? 〔ジリー〕 もうたくさん…。 (彼が彼女にもっと質問する前に彼女は消える。) 〔ラウル〕 (彼女の背後に) マダム・ジリー…! |
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